吉松章のブログ

つまらなきこの世の中をおもしろく。日々の思考を書き連ねて。

アレン教授のアプライド・ドラマワークショップに参加

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私が初めて訪れた海外は、イギリスである。

ビートルズリヴァプール、サッカーのマンチェスターなど、ロンドンだけでなく、有名な場所はあるが、私が訪れたのは、北西部のチェスターである。
二時間ほどあれば、隅々まで廻れる小さな町であるが、そのチェスター大学で教鞭をとる、アレン・オーエンズという、教育演劇の巨人がいる。

演劇的手法を用いて、コミュニケーション教育や社会問題解決(刑務所でワークショップやったり)にも用いられている、アプライド・ドラマ(応用演劇)という手法のワークショップを久しぶりに先日受けてきた。(15年ほど前にイギリスでアプライド・ドラマに出会ってから、1、2年に1回は、アレン教授のワークを受けている)


今回のワークショップ参加者は、教育関係の方が多いようで、題材も、教育に関係しつつ、普遍的な問いや気付きのある内容(プレテキスト)だった。(往々にして、アプライド・ドラマはそういった多義的、まさに応用できる題材が多い)


簡単な挨拶と、アプライド・ドラマの説明、そしていつものアレンのスプーン(50センチくらいの木製の大きなスプーンに、アレン氏がワークショップを行ったり題材にした様々な国や土地のドラマを象徴する、雑貨や小さな楽器、布やアクセサリーなど付いている)


「Blue Balloon」(青い風船)というテキスト。(オーストリアの元作品があるようだ)

舞台は、100年前の遊園地。頭上には広く清々しい青空が広がっている。登場人物は好奇心旺盛な少女と、厳格で、どちらかと言えば保守的な考えを持つ叔父の二人。

少女は夢で、青い風船の夢を見たことがあった。

ある日、叔父と遊園地に出掛けると、夢で見たあの青い風船が売っているのを見つける。

運命的な出会い感じた少女は、青い風船を叔父にせがむが、叔父は買ってくれない。値段は3マルク(高価)

というような物語から始まる。

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ワークショップでは、まず青い風船を数人のグループで体を使って作り、イメージを共有しつつ動いてみる。音楽は古い遊園地のメリーゴーランドでかかるような曲をBGMとして、アレン氏がアイフォンか何かでかける。(アプライド・ドラマではそのドラマを象徴する一曲を、グループワークで繰り返し用いる)

次に、少女の名前と年齢を決める。

最初に発言した方が、「マナちゃん!」、次の方が
「7歳」と発言。少女はそれで決まり。叔父は何歳かわからないが、中年くらいだろうか。

最初にアレン教授と、ファシリテーター兼通訳のナオミ・グリーンさんが、叔父とマナちゃんに扮して、青い風船を買いたくて叔父にせがむシーンを演じる。

次に参加者で二人組みになり、役を交代しながら、同じくマナちゃんと叔父のやりとりを演じてみる。(マナちゃんが結果的に風船を買えても買えなくてもどちららでも良い。即興で会話する)

大筋としては、マナちゃんは叔父に風船を買ってもらい、叔父はその風船を膨らませているヘリウム(当時発見された、新しい貴重な元素)を勉強してほしいが、夢にまで見た青い風船が嬉しくて全く叔父の言葉が耳に入らない。

参加者の二人組みで即興でそのマナちゃんと叔父のシーンを演じてみる。


物語はさらに進み、青い風船を無事に買ってもらったマナちゃんは、近くの公園に行き、叔父とひと休み。

その公園には、恐らく貧しい家庭にいるような少女(階級社会のあるイギリスであるアンダークラスだろうか)が、佇んでいた。服もボロで、その日の食事にも困っていそうな感じ。

叔父がその少女を見て、マナちゃんに言う。

「その青い風船を、あの子にあげなさい。」

マナちゃんはやっと買えた夢の風船を名も知らぬ他人はあげたくないので、「やだ!」と拒否する。

そして、最後には風船を空へ飛ばしてしまうマナちゃん。空に飛んでいった風船は綺麗で、いつまでも見続けることができた。


また二人組みになり、マナちゃん役と叔父役を代わる代わる演じる。風船は貧しい少女に渡してもいいし、物語通り、空に飛ばしてもよい。


さらに物語は進み、叔父がいくつも風船を買ってくるので、最後のひとつをマナちゃんは、少女に渡す。少女は風船奪いとるようにして持ち帰り、家の中で風船を飛ばす、低い屋根があり、勿論空には飛んでいかない。が、日が経つごとに中のヘリウムが減っていき、最後には地面に落ちてぺしゃんこになってしまう。勿論ヘリウムの風船は高価なので自分では買いたくても買えない。

「だったら最初から、あの美しい青空に飛ばしてしまったほうが良かった。」と思う少女。

ここでまた、二人組みで代わる代わる役をやってみる。

そして最後に、今日を通しての感想や意見、自分達の生活(教育や会社、家族や学校など)にどう活かすかを皆で考えたりして。


約2時間のワークショップだった。あっという間。


最後は簡単な飲み会になったが、そこでも、今回のワークショップについて真剣に、時には冗談も交えながら、イギリスと日本の違い、ひいては個人の違いについても話したりした。


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